人生後半に「同志」と出会えた

2017年に62歳で、5歳上の法律家、ナイジェル・ボードマンと再婚しました。先日、結婚5周年のお祝いをしたばかりです。私にとっては約20年ぶりの結婚生活となりましたが、再婚してよかったと心から思っています。

最初に結婚したのは30代半ばごろ。2人の素晴らしい息子を授かりましたが、残念ながらこの結婚は5年しか続きませんでした。離婚したのは、長男が5歳ぐらいのときだったと思います。その後はロンドンビジネススクールの教員を続けながら、シングルマザーとして息子たちを育てました。

あの頃はとにかく無我夢中で働きました。それしか方法がなかったのです。2人の小さな子どもを育てながら教員の仕事をするのは、とてつもなく大変なこと。当時、ロンドンビジネススクールには在職中に妊娠、出産した女性教員は一人もいませんでした。それほど両立が難しい仕事なのです。

でも私は、ここでやり切るしかないと思っていました。離婚してからの十数年間は仕事と子育てに忙殺され、私の人生のなかで最も苦しい時期だったと思います。

夫のナイジェルと初めて出会ったのはいまから10年ほど前。当時の彼は、イギリス国内でも有数の企業法務弁護士。仕事仲間としてともに過ごすうちに、この人は何か自分ととても似ているところがあるなと感じるようになりました。

まずとにかく意志が強い。それからほかの人とは違う強烈な個性を持っている。私自身もそうですが、強い個性の持ち主はなかなか他人から理解されづらいところがあります。

でも、私は彼のことをよく理解できるし、彼も私のことを理解してくれる。一緒にいると自然に、お互いを思いやることができました。恋人というより、同志のような関係だったかもしれません。心からわかり合える「同志」と結婚し、人生の後半をともに歩むことができるのは幸せなことだと感じています。

『リデザイン・ワーク 新しい働き方』(リンダ・グラットン:著/東洋経済新報社)