父と祖父

母と結婚し、埼玉で生活の基盤を築いたことをどう考えているのだろう。墓をせっせと掃除する姿を見て、ふと、それまで考えてもみなかった疑問が頭に浮かんだ。

『最後の旅』(著・写真:高重乃輔)

私はこれまで、父の若い頃の夢や野心について、思いを巡らせてみることがあっただろうか。

一方で祖父は、憑き物が落ちたかのように飄々としていた。

私たちが墓掃除から戻ると、食べ慣れた島の芋を頬張りながら、ねぎらいの言葉をかけてくれた。「ご苦労さまー、ありがとうねー」。島の空気がそうさせたのか、祖父は機嫌が良かった。