妻の角替和枝さん(左)と(写真提供:柄本さん)

こうして生きていく

第三の転機は、奥様の角替和枝さんが亡くなったこと? 2019年の1月末、私は下北沢の北沢タウンホールで行われたお別れ会に行った。その時の柄本さんの挨拶。

「ベンガルや綾田俊樹が、『暫』という劇団に可愛い子がいると言うので見に行ったら、本当に可愛かった。多分僕が一番可愛いと思ったので、結婚したのだと思う。とてもいい人間でした」

――毎年人間ドックに行ってたのに、原発不明がんで亡くなりました。毎朝必ず喫茶店に行って二時間もおしゃべりして。夫婦喧嘩してても喫茶店へは行きましたからね。

亡くなった当初はちょっとそこ、行きにくかったりしましたね。「もうだいぶ馴れましたか」とか「立ち直れましたか」って訊かれるけど、ぽっかりあいた穴はそのまんまですね。

このところ、毎日ではありませんがうちの稽古場で朗読会をやってます。朝の9時から30分間。劇団員がそれぞれ本を持ち寄って。僕も毎回出ています。入場無料なんで、ご近所の常連さんもおられます。まぁ、チェーホフの台詞じゃないけど、こうして生きていくんですね。

 

『ワーニャ伯父さん』。明日も生きていきましょうよ、って。

――そうだね、ソーニャ、って(笑)。こういう話ができて、嬉しかった。