飲食店はこれまで、バブルの崩壊やリーマンショック、新型コロナウイルス蔓延による営業自粛など、度々逆境にたたされてきました。そんな数ある逆境を乗り越えてきたのは、銀座のクラブのオーナーママとして40年間生きてきた伊藤由美さん。接客の最前線に立ちながら、店の経営にも全面的な責任を持つオーナーママの経営者としての「ビジネス哲学」とは。その伊藤さん「自分が関わるものごとのすべての原因は、自分の内に存在する」と言いますが――。
出資の申し出はすべて断った
バブル景気で世の中が浮かれていた頃、何度か「お金を貸すから、もっと広くて大きな場所に店を移転しないか」と持ちかけられたことがあります。
今でこそ、ビルのワンフロア全体をお店にしていますが、当時はビルは同じですが、お店はフロアのなかの一室だけ。銀座のクラブとしては、30坪あまりと大きな店ではありませんでした(最初の店はもっと狭かったのですが)。
そんなときに「いい話でしょ」と出資の申し出をいただいたのですが、そうしたお話はすべてお断りしてきました。
分不相応なことはしたくないという思いもあったのですが、それに加えてもうひとつ、「本当の意味で、自分のお店でなくなってしまう」という不安もあったのです。
確かにお金を出してもらえればお店を大きくできますが、それでは「自分の店」「自分の城」ではなくなってしまいます。
それでは、これまで『クラブ由美』を愛してくださった、贔屓にしてくださったお客さまに申し訳が立たちません。