2022年の敬老の日の発表によると、日本人の9.9%が80歳以上だそう。人々の栄養状態がよくなったうえ医療の発達もあって、個人差はあるものの、元気な高齢者が増えているのも事実のようです。一方で「実は年齢というのは意外に意味のないもの」と語るのは、老年医学を専門とする精神科医・和田秀樹先生。和田先生いわく「むしろ若い世代のほうが心が老いてしまっていることが多い」のだそうで――。
年齢を当てはめて答えを出そうとする
少し気になることがあります。
平均年齢が50歳に近づき、世の中に高齢者が溢(あふ)れ、職場にも中高年世代が居座るようになると、今度は若い世代に「年寄りが目障り」とか「大人しくしていればいい」といった反感が広がっているように感じるのです。
実年齢を当てはめようとしたり、齢で相手を見るのが心の老いの始まりだとすれば、むしろ20代のようなうんと若い世代にもそういう傾向が強まっていないでしょうか。
たとえば高齢者が運転する車が事故を起こすと、「80過ぎて運転なんていい迷惑だよ」とか「免許証に年齢制限作ればいいだけの話じゃないか」といった見方をします。
運転しているそれぞれの高齢者の実像はまったく無視して、年齢を当てはめて答えを出そうとします。
わたしが不思議に思うのは、若い人ならむしろ「自動運転システムをなぜ実用化できないんだ」とか「いまの技術でもできることはあるはずなのに」といった技術改革やシステム開発のほうに関心が向けられてもいいような気がするのに、そういう意見はまったく出てこないところ。ただ高齢者の年齢だけを見てしまいます。