高齢者の血圧の上限は?

しかし、「改悪だ」という批判も多く、一部には「たくさん降圧剤を処方するために、製薬会社と結託して基準を下げたのではないか」と疑う声まである。現実に、製薬会社が関与した降圧剤の比較研究で大規模なデータ改ざんが最近明らかになったばかりだ。

それに、高齢者の場合、ある程度血圧が高くても、健康へのリスクは上昇しないという疫学調査もあちこちで出ている。

代表的なものに、アメリカの大規模かつ長期的な疫学調査である「フラミンガム研究」がある。これは、マサチューセッツ州のフラミンガムの住民を対象に、1948年から60年以上、今も継続しておこなわれているかなり大規模な疫学調査で、信頼性も高い研究である。

この調査では、高血圧による心血管リスクや死亡率には、加齢に伴って閾値(いきち)が上昇するという結果が出ている。

65歳から74歳の前期高齢者では、男性で約160mmHg、女性で約170mmHgを超えた時点で、心血管リスクや死亡率が高まるのだという。

また、別の調査では、80歳以上では180mmHg以上が閾値だという結果もある。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)