『やさしい猫』(著:中島京子/中央公論新社)2020年より『読売新聞』夕刊に連載され、入館問題を取り上げて話題に。第56回吉川英治文学賞受賞作

まずは「知ること」が大切

やさしい猫』の原作に、こんな一文がある。

“これは、東京の片隅の、小さな家族の小さなケースです。でも、この裁判は、日本の社会に根を下ろして生きて行こうとする外国籍の人々に対する国の姿勢を問うものです。”
本作を通して、優香さんは「入管」にまつわる様々な問題を抱える人たちがいることを知った。

入管問題に関して、ニュースで聞いたことはあったものの、詳細をきっちり把握していたわけではありませんでした。なので、この作品を通してはじめて知ったことがたくさんありました。こんなことが起きているのか、と。

ミユキさんも、クマさんに出会うまでは入管法や入管のシステムについて、何も知りませんでした。だから、撮影中はミユキさんと一緒にいろんなことを学びながら進んでいるような気持ちでした。

このドラマで「入管」のことを知る方もたくさんいらっしゃると思うし、原作を読んでこのドラマを見る方もいらっしゃると思うんですけど、やっぱり「知る」ということが大事だなと思っています。

1話目はハッピーですが、2話目からはどんどん苦しい展開になっていきます。家族みんなが誰かのためを思って進んでいく姿を、視聴者の皆さんにも一緒に感じていただけたらと思います。

(撮影◎米田育広)

(写真提供:NHK)

『やさしい猫』【あらすじ】
シングルマザーで保育士のミユキ(優香)は、震災ボランティアで訪れた東北で、スリランカ人のクマラ(オミラ・シャクティ)と出会う。1年後、運命的な再会を果たした2人は次第に惹かれ合い、ミユキの娘・マヤ(伊東蒼)を交えた3人は家族のように一緒に暮らし始める。

婚姻届を提出し正式に夫婦となった直後、クマラは在留期間が過ぎてオーバーステイとなったため入管施設に収容され、強制退去を命じられる。処分の再考を訴えるも、入管職員・上原(吉岡秀隆)は事務的に拒絶する。口頭審理では偽装結婚ではないかと疑われ、絶望するクマラとミユキ。入管での面会はアクリルごしに30分のみ。理不尽な対応への怒りと、助けられない悔しさにミユキとマヤは打ちひしがれるが、わずかな望みを託して弁護士・恵耕一郎(滝藤賢一)を訪ねる。その恵弁護士を紹介してくれたのは入管でこの件に対応した上原だった。

クマラを助けるためには、裁判を起こして処分の取り消しを勝ち取り、在留特別許可を得るしかない。ただ家族3人で暮らしたいだけ…ささやかな願いを胸に秘め、国に対する戦いに挑んでいく。

土曜ドラマ「やさしい猫」
【放送予定】2023年6月24日(土)放送開始 全5話
       毎週土曜よる10時~10時49分[総合]
【原作】中島京子
【脚本】矢島弘一
【音楽】林正樹
【出演】優香 伊東蒼 オミラ・シャクティ 山田真歩 石川恋 南出凌嘉
            池津祥子 麻生祐未 余貴美子 滝藤賢一 吉岡秀隆 ほか
【制作統括】倉崎憲
【プロデューサー】伴瀬萌 大久保篤
【演出】柳川強 安藤大佑