絵手紙部門入選『「おいしいね」と言える幸せ』 内藤三枝子(ないとう・みえこ)さん
がんと告知された時の不安、がんと共に⽣きる決意、そしてがんの経験を通して変化した⽣き⽅など、⾔葉だけでは伝えきれない想いを絵画・写真・絵⼿紙で表現する「場」があります。がんサバイバーの方の思いが詰まった作品を紹介します。

私がいなくなったとき、夫の食事が心配で

十二年前のことです。私の乳がんの手術は無事終わりました。ひと安心していたところ、再発予防のために、半年間、通院して抗がん剤治療をすることになりました。
辛い治療のことを考えると、怖さと不安で落ち込み、気持ちがどんどん暗くなりました。

もし、私がいなくなったら「夫は何を食べるんだろう」と、ふと思いました。料理など一度もしたことのない夫の毎日の食事のことが心配になりました。
二人の子供たちは、離れて暮らしているのであてには出来ません。

治療が始まる前に、夫に簡単な料理を教えておこうと思い立ちました。
先ずはカレー作りからと思い、夫と並んで台所に立ち、じゃがいもの皮のむき方から教えました。夫のまどろっこしい手つきに、これは先が思いやられるなあと思いました。

几帳面な夫は、野菜ひとつ切るのにも時間がかかります。それでも一生懸命に覚えようという気持ちがあるので、私も辛抱強く教えなんとかカレーが出来上がりました。