長い時間をかけてストレッチをしながら、バーを使って1番してタンジュして、5番してルルベしてプリエしてグランプリエしてと進んでいく。先生がやってみせてくれる動きは、真似しようとしてるのに、何がなんだかわからない。他の人の動きを見ている余裕もない。ズンバだって初めはそうだったから、いつかわかるようになる、と遠くでかがやくバレエ星を見つめる。

5番でプリエをしながら、見返り美人とエビ反りするの中間みたいな感じで、上半身を反らせて腕を伸ばし、手の先に視線を持っていく。手の先は、しなだれているような弥勒菩薩の指先のような。教室の方針はワガノワ式なので、弥勒菩薩じゃなく、親指は中指につけずにただ隠しておくそうで。

隣の人のやっているのを見るとすごい。ふわりと手が宙に浮くのである。クラスの後にしゃべったときには、あたしより若くてやせてはいるが、人間としては若くはなくて、普通に肉体のある人だった。なのにふわりとする。手だけじゃない。足もふわりとする。背中もふわりとする。

動かす筋肉はズンバとあまり変わらない。汗はかくけどズンバほどではない。次の日の筋肉痛はまったくなかったが、もしかしたら毎日山歩きしているせいかもしれない。いやもしかしたら、追突事故にあった直後だったからかもしれない。くそ苦いアメリカ風のIPAというビール(ズンバ)を繊細なワイングラス(ふわり)で飲んだような感じだった。すごいところに飛び込んじゃったなと思ったのであります、初日は。