で、次のクラスで気がついたこと。プリエはスクワットじゃないのだった。プリエはお尻を突き出しちゃいけなくて、スクワットはお尻を突き出さないといけないのだった。そういうことか、と今になって思い当たるのが『テレプシコーラ』第二部第一巻。六花ちゃんは股関節が開かないから「グランプリエしたらいやでもおしりが出てしまう」と六花ちゃんのお母さんが言うのである。
あたしはそんなもんじゃない。「1番で」と先生が言うが、精いっぱいやってできるのはナナメ1番くらいなやつで、「5番で」と言われてやるのは実質3.5番。でもそのとき、丹田がグッと締まり、骨盤がカッと開くのを感じる。肩や胸も開いて、身長が三センチ伸びる。これをやるだけでも、ずいぶん世界の見方が変わっていくだろうと思う。
その後あたしは東京に行き、モノレールや地下鉄やJRに乗ったのであるが、ホームで待ってるときも、エスカレータに乗ってるときも、3.5番で丹田をグッと締めて骨盤をカッと開く。ついでにチャクラとかいうものも開いちゃうような気がするのである。
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米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。
週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。一人の暮らしの自由と寂寥、60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための〈言葉の道しるべ〉。