あのいつも熱気に満ちていた地下劇場に、そのような危機の期間があったとは……。

――佐藤信たちは黒テントでやりたいって言って、村井國夫や地井武男はテレビのほうへ行くとかバラバラになった。たまった借金は置いてかれて。劇場のスペースを手放しちゃえば返済は簡単なんだけど、ここは大事にしたいなと思ってね、一人で毎日行っては佇んでた。そう、のん気に途方に暮れてたんですよ。

そしたらある日、その頃しばらく演劇活動を休んで花屋でアルバイトしていた吉田日出子さんが、あの狭い階段をトコトコ下りて来て、「何してんの?」って。

その後、劇団の裏方を経て一時は船乗りになっていた笹野高史が来て、そのうち柄本明も来て、また一緒にやろうよ、ってことに。

それで今度は学校っぽいことを始めようというんで、麻布アクターズジム(AAG)を作って、その一期生が岩松了とか高田純次、綾田俊樹やベンガルとかいろいろいて、二期生に真那胡敬二や大森博史。そのあと小日向文世とか余貴美子とか面白いのがワッと入ってくる。

佐藤B作は実は選考で落とした研究生なんだけど、朝一番に来てそこらを掃除してんだよね(笑)。僕も若いし、「落としたはずだろ」って言えなくて、そのうち「みんなで自主訓練して何か発表しなさい」って言ったら、もう自分が仕切って主役やってた。落とさないでよかったな、と思ってね。

<後編につづく