ミツオさんは数年前に妻を病気で亡くし、子どももいない男やもめ。翌朝、サワコさんが「昨日は楽しかった。ありがとう」と連絡すると、「来週、僕たちの小学校を見に行こう！　近くに美味しい店があります」という返信が届いた。そこで、初めて二人で会うことに。

「思い出の場所でデートしてすっかり童心に帰り、はしゃいじゃいました。それ以来、2週間に1回程度、ランチをしたり散歩したり。ほんわかとした交際が1年ほど続いた頃、彼の誕生日に思い切って自宅へ招き、手料理を振る舞うことにしました。一人住まいの家に男性を誘うなんて初めてで、さすがにドキドキ。そうしたら彼、花束を持ってきたんですよ。『これじゃ、どっちの誕生日かわからないわよ』って大笑い。緊張が一気に解けました」

ディナーの最中、ミツオさんからプロポーズされ、サワコさんはその場で「はい。お願いします」と答えた。

「プロポーズを受け入れたのは、正直、老後を一人で生きるのが不安だったからです。元夫が養育費を払ってくれなかったため、貯蓄はほぼゼロ。老後資金を稼がなくちゃ、要介護の身になったら子どもに迷惑をかけてしまう、という思いが常につきまとっていました。打算がなかったといえば、嘘になります。でもね、暖かい毛布に包まれるような気持ちにさせてくれる彼に、そばにいてほしかったのもまた事実なんですよ」

この選択に、子どもは大賛成だったという。賃貸住まいだったサワコさんは、ミツオさんの持ち家へ引っ越した。家事もお手のもののミツオさんに、日々助けられているとか。

「料理は美しく盛りつけるし、床はピカピカに磨くし、私より家事上手。私、こんなに大事にされてもよかったんだなあって、つくづく感じています」

 

《ルポ》出会いは思わぬところにあった。平凡な日常に恋が彩りを添えて
【１】同級生の意外な告白で自尊心を取り戻して
【２】孤独な日々にワクワクをくれたのは
【３】船の上で出会い、80歳で事実婚を決意