サイズは十年単位で変わる

この頃、四十二歳の私はいまより瘦せていたから、ヨーガンレールの黒スーツも袖、裾、ウエストを詰めてもらった。その後そのスーツは、ちゃんとした格好をしなければならない講演会にも着たし、娘の小学校お受験にも着た。だから元を取ったと言えば言えるが……。

五十代で夫の親戚の葬儀があり、着ようとしたときにはウエストが嵌まらなかった。五センチほどあけて安全ピンで留め、シャツ、ジャケットで隠し、その場を切り抜けた。その後、高級ホテルのフロントに就職した妹分に、ご祝儀としてあげてしまった。

『親を見送る喪のしごと』(著:横森理香/CCCメディアハウス)

着物はまだ、合わせやおはしょりを浅くすればサイズが変わっていても着られるが、洋服だけはサイズが違うと、入らない。

去年、友人Sのお父様の葬儀の際、喪服はどうしようかなぁと焦り、親友に借りた。彼女が母親の葬儀の際に誂えた、マックスマーラの黒スーツだ。親友は大柄だから、きっといまの私でも着られるだろうと。

「いーよいーよ、クリーニングしたまましまってあるからさ」

と貸してくれ、試着してみると、ぴったり。年月とは恐ろしいものだ。