真衣さん「最後までできたことがまだなくて……」(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
不倫、少女売春、風俗、高齢者の性など、光の当たっていない世界を取材してきた作家・僧侶の家田荘子さん。近年、家田さんが精力的に取材をしてきたのが「30歳を過ぎて性経験がない女性たち」だ。大反響だった前回に続き、今回は「最後までできたことがまだなくて……」と語る32歳の真衣さん(仮名)を取り上げる。彼女の身に起きたこと、向き合っている現実とは――。

20歳の時の「最初の人」

「はじめて試してみたのが20歳を過ぎた時、それからいろんな人と試してみたんですけど、途中までで、最後までできたことがまだ1回もなくて……」

コールセンターで働いている真衣(まい)さん(仮名、32歳)は、高い声で流れるように話し始めた。タレントの高橋真麻(たかはしまあさ)さんの話し方に似て、さわやかだ。

真衣さんに会った途端、まず私の目に飛び込んできたのは、グレイのセーターからはみ出しそうなほど立派な彼女の胸だった。真衣さんは、肉感的なスタイルで、薄化粧でも十分に愛らしい、男性に惹かれやすいタイプだった。

なのに、未だ一度も男性経験がないという。真衣さんを見た人なら、誰もがきっと未経験とは思わない。むしろ経験豊富な女性という印象を持つだろう。

いったい、20歳の時から32歳の今日までの12年間に何があって、なかったのか。私は、真衣さんに20歳の時から順を追って話してもらった。

真衣さんの「最初の人」は、同じアルバイト先のホテルで配膳の仕事をしていた21歳の男性だった。

「おつきあいを始めてから、そういう流れになって、ラブホテルに行ったんですけど、ダメでした。すごく痛くて苦痛で…。彼にははじめてと伝えてあったので、『ゆっくりでいいよ』って言ってくれたんですが、あまりにも私が痛そうにするので、彼のほうから『やめようか』と言ってくれたんです。それで私、はじめてわかりました。皆、当たり前にしていることが私にはできないんだ……って」

それで彼は? と尋ねると、

「何も……」

真衣さんの左頬のホクロがすこし歪んだ。