「最初は誰でも痛いものよ」

真衣さんは、クリニックにも行って診てもらった。しかし、特に身体的異常はないと医師は言った。

「手術は、よっぽど小さい人しかしなくて、大体の人が気持ちの問題だからって、治療もしていないそうなんです」

しかし、その痛みは、真衣さんが今まで経験したなかで一番痛い、骨折の痛みや火傷(やけど)や擦過傷(さっかしょう)をはるかに超えているそうだ。

「はじめての時がものすごく痛かったので、怖くて力が入っちゃって、余計に痛く感じるのかもしれません。入口付近に指が触っただけでも、すごい痛く感じてしまう。周りは皆、当たり前のようにできてるし、子供を産んでる友達もいるから、今さら私も人に相談しづらいんです」

確かに、自分が少数派のなかに入っていると、言うほうに悪気がなかったとしても、どんなに傷つく言葉を浴びせられるかしれない。

唯一、その話をできるアルバイト先のママでも、「最初は誰でも痛いものよ。どうしてもそれは痛いものなんだから」程度の言葉しか返すことができなかった。

続きはこちら:「12年間で30人ほどの男性と試してみても進展なし」「結婚どころか恋愛だってできないんじゃないかと」痛みが原因で<できない>32歳女性を家田荘子が取材【中編】

※本稿は、『大人処女ーー彼女たちの選択には理由がある』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。


大人処女ーー彼女たちの選択には理由がある』(著:家田荘子/祥伝社新書)

30歳を過ぎて性経験がない女性、大人処女。彼女たちは、なぜそれを選択したのか。著者は、梓さんを含む9人に寄り添うように取材、すこしずつ聞き出していく。そこには、9者9様のドラマがあった。さまざまな価値観と生き方を伝えるノンフィクション。