死はだれにでも等しく訪れる。生きていれば、大切な人の死に立ち会うこともあるでしょう。92歳になる作家の曽野綾子さんは、これまで数多くの国や地域を巡る中で「生きること、死ぬこと」の本当の意味を実感したといいます。富める人、貧しい人、キリスト教徒、イスラム教徒……それらの出会いで知らされた「勝ち負けのない人生」とは。曽野さんいわく「私が結婚に成功したと思う第一の理由は、同国人と結婚したことだ」と言っていて――。
文化で違う愛の表現
私が結婚に成功したと思う第一の理由は、同国人と結婚したことだ、と時々思う。
私のような人間がいるから、日本人は閉鎖的で、いつも固まって暮らすことになり、異文化の理解は不足し、貿易摩擦はいよいよ増えることになり、日本人はエコノミックアニマルだと言われるのだ、と言われても、正直なところ、私はそうとしか思えないのである。
私が夫婦の語らいを常に外国語でしていられるかどうか考えるのは、この際よそう。
私は外国で長い年月暮らしたこともないから、材料は極めて不足なのだが、夫婦ともなれば、当然愛を示し合わなければならない。この示し方がどうも根本から違いそうなのである。