(構成◎内山靖子 撮影◎本社 奥西義和)
「ケムリ研究室」の舞台は、自分の現在地を確認する場所
今回、参加させていただく「ケムリ研究室」は劇作家であり演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチさんと女優の緒川たまきさんのお2人が、2020年に結成した演劇ユニットです。第1作目の公演『ベイジルタウンの女神』にも呼んでいただいたので、今回は3年ぶりの出演です。
「ケムリ研究室」の芝居は、KERAさんと緒川さんの感性が融合し、他にはない新しい世界が生まれてくるところが魅力です。しかも、1作目はおとぎ話のようなタッチで、2作目の『砂の女』はシリアスと、作品ごとにまったくカラーが違う。近未来を舞台に、SFとレトロな空気が混ざり合う今回の『眠くなっちゃった』も、いったいどんな作品になるのか、フタを開けてみないとわかりません。そんな予測がつかないドキドキ感も「ケムリ研究室」の大きな魅力だと思います。
KERAさんは稽古をしながら執筆を進めていくスタイルなので、毎回、稽古の当日に印刷されて渡される、出来立てホヤホヤの瓦版のような台本を読むのも楽しみなんですよ。「ケムリ研究室」第1弾『ベイジルタウンの女神』のときに渡された台本には、私の役名が「ハム」って書かれていて、「えっ? ハムなんだ~」って面白かったです(笑)。もちろん、すごく緊張します。書かれているのはセリフとト書きだけで、その役がどういう人物なのか、そこからどうなっていくのかはまだわからない。そんな状態の台本をいきなり渡されて、初見で演技をするわけですからね。おまけに、今回もそうですけど、篠井英介さんや木野花さんなど、共演者の方々はそうそうたるメンバーばかり。そんな方々の視線を浴びながら、即興に近い状態でお芝居をしなきゃならないので、かなりの緊張感が走ります。
それだけ自分の力量が試される「ケムリ研究室」の稽古場は、私にとって自分の現在地を確認する場所になっています。1作目に出演してから今回までの間にどれだけ成長できているか、自分の引き出しをきちんと増やせているかどうかが試される。毎回ワクワク、ドキドキしながら、自分の力が鍛えられていく。今回の舞台でどんな自分をお見せできるのか、私自身も今からとても楽しみです。