このドラマらしい結末だった
「人と人は他人同士だし、本当のところはわからないんだと思う。でも、それは悲観するようなことじゃなくて、自分と考えや価値観が違っても全部分かり切らなくても、違うんだってことを理解して、向き合って行きたいんだ」
最後、向井くんが坂井戸さんにこう伝えるシーンは、このドラマ全体のメッセージのように感じられた。人と人は完全には分かり合えない。完全にはわからないからこそ、相手を知ろうとする過程が尊い。違うと自覚するから歩み寄れる。そんなことを思った。
ふたりの友情関係は、向井くんが坂井戸さんへの思いが特別なものだと自覚して、変化が訪れる。男女の友情が有限だと言われる所以は、相手に対する「好き」が恋愛の色を帯びていくからだろう。両方でなくても、片方が意識すれば友情は破綻すると思われている。坂井戸さんを恋愛対象として意識していることに気づいた向井くんは、悩みながらも思いを告白する。
それに対する坂井戸さんの答えは「向井くんと別れてこのまま会えなくなるのは嫌だなって思った」「ありがとう、向井くん」というものだった。付き合うというオチではなく、「ただ一緒にいたい」と気持ちを確かめ合うのも、なんだかこのドラマらしい結末だった。
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