還暦過ぎてから、「病」と「料理」を初体験
若竹 じつは私、芥川賞をいただいた後、大きな病気をしたんです。だんだん足が動かなくなり、最終的には、運転中にアクセルからブレーキに足を移動させることすらできなくなって。
内館 ええっ!
若竹 「年齢的に脊柱管狭窄症でしょう」とお医者様から言われ、いくつか整形外科を回り、鍼も試したけれど、全然よくならない。せっかく作家デビューできたのに寝たきりの生活になるのかな、とショックでした。
病院でMRIを撮ったら、脊髄にビー玉くらいの大きさの腫瘍が見つかって。腫瘍が神経を圧迫し、足が動かなくなっていたんです。3ヵ月ほど入院して、手術後にリハビリ病院に転院しました。
内館 たとえ病気になってもなんとかなるって、2人で自信を持って言えるわね。
若竹 手術後は、ずっと紙おむつの生活でした。それまでは高齢者施設に入りたくないとか、人に下の世話をされるのはイヤだな、と思っていたんです。でも紙おむつを替えてもらい、お風呂にも入れてもらっているうちに、「ありがたいなぁ、これも悪くないなぁ」と感じるようになって。
リハビリ病院ではみんなでご飯を食べたり、レクリエーションしたり、まるで高齢者施設の予行演習。おかげで私、老後が怖くなくなりました。