内館 ある程度の年齢になると、病気や怪我は避けて通れないけれど、私は生死の境をさまよったことで、病気になっても過剰にクヨクヨしないが勝ちだと実感しました。
若竹 そうですね。若い頃は、もし私が死んだら残された子どもたちはどうなるんだろうと考えたし、死ぬのは怖いことだったけれど、いまは彼らも家庭を持って、私の心配の種がなくなったから、すごく楽。
内館 大病前、私の食生活はすごくすごくいい加減で、医師にきつく注意されました。だって仕事の打ち合わせをしながら、ほぼ毎日外食。ヘビーな和洋中が続くと、次の日はコーヒー1杯でずっと脚本を書いている……みたいな。60歳まで、まともに料理したことがなかったの。
若竹 はぁ~っ!(笑)
内館 医師に「病気はそのツケ」だと言われました。でも、なにせ奇跡的に助かった身ですから、まずは点滴。しばらくするとドロドロの流動食が出たんだけど、どうしても飲み込めない。どんどん痩せて、ついに医師に「栄養が摂れないから点滴に戻してください」とお願いしたんです。
そしたら、「人は一本の点滴より一口のスプーンですよ」と言われた。これは強烈な一言でした。「生きることは食べること」なのだと身に沁みました。それで口から頑張って食べるようにしたら、みるみる回復。「退院後は自分で作って食べよう」と決心して、還暦過ぎてから厨房に入って。図々しくも料理本まで書いちゃった。
若竹 私は逆です。ずっと家族のために料理してきたので、いまの自分の食事は本当にでたらめ。お惣菜やレトルト食品とか、食べたいときに食べたいものを食べたいだけ食べる。それで病気になっても、そのときはそのとき。おかげで身体は増量中ですが、もう1回お嫁さんに行くわけでもないし、自分を思いっきり甘やかしています。(笑)