「リハビリ次第」なら、できることを全部やろう

入院してから10日間ぐらいは右半身の状態がよくなかったが、徐々に右手右足も動くようになった。そんな頃、子どもたちがリハビリの長期的なプランを練ってくれていた。少しでももとの状態に近づけようと前向きに取り組んでくれた。

私はこれまで、自分が進むべき道は自分で決めてきた。しかし、86歳で登頂挑戦をしたアンデス山脈にある南米最高峰の山・アコンカグアでは、健康管理をゆだねていた豪太や大城先生の進言により下山を決めた。それは、私がふたりを信頼していたからである。

『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』(著:三浦雄一郎、三浦豪太/主婦と生活社)

あれが、高齢の私がさらに前に進むための分岐点だったのかもしれない。

そして、頸髄硬膜外血腫に倒れた87歳の私は、子どもたちや周囲の人たちに多くをゆだねた。

我が家のホームドクターであり、スポーツ整形外科の第一人者であるNTT東日本札幌病院(以下:NTT病院)の井上雅之先生をはじめ、信頼できる人にゆだねつつ、自分自身が前向きに頑張れば、再び立ち上がり、また歩いていくことができると信じていた。

ドクターは「リハビリ次第」だという。ならば諦めずにリハビリに励もう。今の状態をなんとか脱して、ともかく富士山にでも登れるぐらいに復活したい。一方で、歩くことはおろか、立つこともできない状態で、回復までは相当長くかかるのだろうという覚悟もあった。長い時間、この状態と向き合う必要があるのだろう。

長丁場になってもいい。とにかく、できることはすべてやっていこうと決めた。