2020年に難病で倒れて緊急手術。新たな挑戦が始まった(左は妻の朋子さん)。(写真:『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』より)
「国民生活基礎調査」(2019年)によれば、要介護認定を受けた世帯数は増えており、構成割合として「要介護4」はそのうち7.5%となっています。要介護4は、介助なしで立ったり歩いたりするのが難しい状態を指しますが、70歳を過ぎてから三度のエベレスト登頂や、86歳でアコンカグア登頂挑戦をしてきた冒険家・三浦雄一郎さんも、少し前まで「要介護4」の状況にあったそう。リハビリを続けるなか、91歳の三浦さんが目指す《次の冒険のステージ》とは――

難病に倒れて身体の自由を失い

新型コロナの感染拡大はますます深刻になり、テレビでは連日連夜、そのことを時間をかけて伝えていた。

2020年6月3日の明け方のことだ。苦しさに目が覚めた私は、下半身の痺(しび)れで身体を動かせないことを自覚する。

病気の経験は人並み以上にある私だがこんなことは初めてだ。自分の身体に何が起こったのか、さっぱりわからなかった。ただ、深刻な事態であることは理解できた。

その頃、脳梗塞から1年後の検診に付き添うため、札幌にある私の自宅に泊まりに来ていた息子の豪太に呼びかけ、状況を知らせた。

救急車で病院に搬送された私は、いくつかの精密検査を受けた結果「頸髄(けいずい)硬膜外血腫」と診断される。

頸髄とは首にある、手指、腕を司る神経だ。その頸髄の膜が破れ、流れた血が血栓となり神経を圧迫しているようなのだ。

苦しく、つらかったこと以外はあまり覚えていない。

頸髄硬膜外血腫は100万人に1人という珍しいもので、例が少ないだけにわかっていないことも多いらしい。100万人に1人とは、宝くじに当たるような確率だが、そんな冗談を言っている場合ではなかった。血腫を取り除く緊急手術を受け、そのまま入院生活となった。

こうして、私の新しい挑戦が始まった。