地図を読む上で欠かせない、「地図記号」。2019年には「自然災害伝承碑」の記号が追加されるなど、社会の変化に応じて増減しているようです。半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた「地図バカ」こと地図研究家の今尾恵介さんいわく、「地図というものは端的に表現するなら『この世を記号化したもの』だ」とのこと。今尾さんは、「現実社会の姿が変われば従来の記号では十分に表現できないことも出てくる」と言っていて―― 。
「電子基準点」の記号
地形図の記号はドイツなどの影響を受けながら長く使われてきたものが多いが、現実社会の姿が変われば従来の記号では十分に表現できないことも出てくる。
戦後の傾向としては統廃合による記号数の減少が顕著だが、そんな中で新しい記号もいくつか誕生した。
この30年を概観すれば、まず平成9年(1997)に登場した「電子基準点」がある。
これは米国のGPSや日本の「みちびき」といった人工衛星(GNSS衛星)の電波を受信するもので、高さ5メートルほどのマッチ棒を立てたような形をしている。
地形図の骨格となる三角測量を行うために明治期から三角点が整備されてきたが、現在は衛星の利用で従来よりはるかに高い精度での位置測量が可能になった。
誤差は数センチ単位まで縮まったため、微細な地殻変動の監視にも役立てられている。電子基準点の記号は三角点と電波塔の記号を合体させた形で、その性格をイメージしやすいものだ。