五十路の不調はとんでもなく危険だった
本書のタイトルを見て、手に取らずにはいられなかった。なぜならわたしも50歳になる年に死にかけたから。「いつか」その瞬間を迎えると知っていた。ただしこんなに急にやってくるとは聞いてなかった!
51歳、既婚、子なしの著者。更年期症状に悩みながらも精力的に仕事をこなしている。ある日、いきなり意識が朦朧として、救急車で病院へ。言い渡された病名は思いがけないものだった。
そう、この年齢で具合が悪くなると、大体更年期症状だと思い込む。いや、多分思いたいのだ。誰もが通る道だから耐えられるはず。まだ「いつか」は先のことだ、と無意識に自分に言い聞かせている。
ちなみにわたしが死にかけた理由は、前触れなく腎臓の腫瘍が破裂し、体内で大量出血したから。ある日突然、死にかけたという意味では著者と同じ。手術を経て体はほぼ元通りになったが、確実に心持ちは以前と違う。著者も退院以降、「死」のフィルターを通して世界を見ている、という。
著者は(わたしも)仕事中心の生活をしていたが、見方を変えれば仕事に依存しているということだ。命を支えるための仕事であって、仕事で命を削っちゃしょうがない。
きっと生きるとはそれだけで過酷なこと。ただ生きているだけで人間はえらい! と声を大にして言いたい。
入院生活の細かなエピソードも実がある。下半身の脱毛、紙オムツ生活、同じ部屋の患者たちの愚痴、周囲への病状報告……死の世界に片足を突っ込んだまま世間を俯瞰すると、どんなことも怖くない。「生きててよかった!」と思った後、今は「まだ死んでいないだけ」という心境にたどり着いた。
達観した心を手に入れ、進化した著者の日記は、「いつか」を迎えるあなた自身をリアルに感じさせてくれるだろう。