2020年に心筋梗塞を患った解剖学者・養老孟司先生は、2024年5月に「小細胞肺がん」と診断されました。養老先生の教え子で、自らも膀胱がんを経験した東大病院放射線科医師・中川恵一先生や、娘の暁花さんとともにがんと闘っています。そこで今回は『養老先生、がんになる』から一部を抜粋し、養老先生の治療に対する考え方についてお届けします。
小細胞肺がんの診断がついた
生検(組織を取って調べる検査のこと)の結果、小細胞肺がんの診断がつきました。小細胞肺がんは転移しやすいがんですが、今のところ転移はしていないと言われました。
転移を防ぐことが重要なので、小細胞肺がんの標準治療は抗がん剤(化学療法)です。抗がん剤の点滴を3日間続け、3週間あけてまた3日間抗がん剤の点滴をします。これを全部で4回行います。
抗がん剤の点滴は3日間ですが、前後にいろんな検査があるので、抗がん剤治療のたびに1週間くらい入院することになりました。
中川さんは最初、僕が抗がん剤を拒否するのではないかと考えていたようです。というのは、『がんから始まる生き方』(中川恵一、柏木博との共著)の中で、もしも自分ががんになったとしたら、「化学療法、つまり抗がん剤も、ストレスが強ければやらないと思います」と述べているからです。
だから、中川さんからは、抗がん剤を1回やってみて、副作用がつらかったら、そこでやめてもよいと言われました。抗がん剤の副作用は個人差があるので、1回やってみて、それほどつらくなかったら、続ければよいと言うのです。僕はそれに従うことにしました。