がん当事者になって変わったこと

『がんから始まる生き方』の僕以外の著者、中川恵一さんと柏木博さん(武蔵野美術大学名誉教授)は、がん当事者です。

19年に出版された本ですが、このとき柏木さんは、東大病院で多発性骨髄腫の治療を受けていました(柏木さんは21年に亡くなる)。

養老孟司
生検を受けている養老先生。ほとんど痛みはないという(写真:『養老先生、がんになる』より)

一方、中川さんは、18年に膀胱がんが見つかり、内視鏡手術を受けています。がん当事者の話というのは、説得力があるものです。

これに対し、僕だけが、がん当事者ではありませんでした。それで、僕があの本で好き勝手にしゃべっていたと思われたのでしょうか。本書の編集者から、「がん当事者になって、変わったことはあるのでしょうか?」と質問されました。

別に考え方は変わっていませんが、がんという病気に対して、以前より、いろいろ考えるようにはなりました。

まあ僕の場合は、身から出たサビです。「あれだけタバコを吸っていたら、肺がんになるのも無理はねえな」という気持ちはあります。