(写真提供:Photo AC)
都市部や郊外で、タワーマンション建設や新規の住宅地開発が積極的に進められている昨今。しかし「不動産価格の高騰で、住宅の入手困難化が深刻」と指摘するのは、都市政策や住宅政策を専門とする、明治大学政治経済学部・野澤千絵教授です。そこで今回は、野澤教授の著書『2030―2040年 日本の土地と住宅』から一部引用、再編集してお届けします。

再開発でタワーマンションばかり建つ理由

近年の市街地再開発事業は、タワーマンションをつくることだけが主眼のようなケースが増えています。

その背景には、コロナ禍以降、特にオフィス需要が低下しており、オフィスの床をつくっても借り手を見つけるのが困難になっていることがあります。また、商業もアマゾンをはじめとするインターネットショッピングが普及する中、店舗で床を埋めるのが難しくなっていることも影響しています。

特に近年、工事費や設備費の上昇が著しい状況の中で事業性を確保するため、より高額に売れる・貸せる床を多く確保する必要が生じています。その結果、大量の保留床が生み出せて、そのほとんどが売れると見込めるタワーマンションにするという選択がなされるケースが急増しています。

デベロッパー等の立場で保留床を売却することを考えると、特にタワーマンションなら高く売れる可能性が高く、分譲なら短期で事業費を回収できて「売りっぱなし」で良いため事業リスクも低減できるということで、メリットが大きいのです。