愛犬とともに、近所のお寺で(撮影:曾根雄司)
現在86歳の冨士眞奈美さんの体調や生活を案じる、娘の岩崎リズさん。冨士さんはそんな彼女に感謝しながらも、普段の振る舞いには少し不満があるようで……(構成=内山靖子)

前編よりつづく

免許を返納して関係が逆転

リズ 常識にとらわれないのはママのいいところだと思うけど、行動がいつも唐突なのよ。私が28歳のとき、何の相談もなく「ひとり暮らしをしなさい」と家を追い出されたし。

冨士 いずれ結婚したらイヤでも家事をしなきゃならないから、学生のうちはラクさせてあげようと家のことはすべて私がやっていた。でもあるとき、自立させなきゃいけないと思ったのよ。

リズ 私が何より驚いたのは、ママが70代半ばで車の免許を自主返納したこと。

冨士 道を歩いていて、急に思い立って警察に返納に行ったの。

リズ 衝動的すぎる。車がまだうちの車庫にあったのに。

冨士 そう。そのときはせいせいしたと思ったんだけど、やっぱり車がないと不便だった。

リズ ちょっとタイミングが早すぎたんじゃない? 車を運転しなくなってから、すっかり出不精になったでしょう。以前は、週2回は伊勢丹に食事や買い物に出かけていたのに。今は私が誘っても、「腰が痛い」と言って動こうとしない。

冨士 電車やバスに乗るのも面倒なのよ。かといって病院を連れ回されるのも疲れるし。