親を介護する際の課題は、「仕事」や「お金」だけだと思っていませんか?実は、もっとも大きな課題は「家族関係」なのです。親を思って介護サービス利用を勧めた結果けんかになったり、自分で介護しようと抱え込んでしまったり……。それまでうまくいっていた家族仲が、介護で険悪になってしまうことも少なくありません。親も子どもも無理せず幸せになれる「家族介護」はどうすればいいのか?外資コンサル会社から介護の世界へ。そして3000件以上の介護相談に乗ってきた川内潤さんの著書『親の介護の「やってはいけない」』より、一部を抜粋して紹介します。
介護で表面化する家族の問題
私は今、複数の企業と契約をして、1日5~6件、年間で700件ほど、親の介護が必要な家族の相談に乗っています。
介護保険制度の解説や使い方、老人ホームの種類なども説明しているのですが、お話をうかがっていると、そのほとんどが、介護に関わる実務そのものの相談というより、家族に関する悩みなんです。
介護に直面することで起こってしまったきょうだい(兄弟姉妹)とのいざこざであったり、親子の諍いだったり、あるいは親戚からのプレッシャーや横やりといった具合です。
私がやっていることは、ほとんどが複雑に絡まった家族問題を解きほぐすことだと言っても過言ではありません。
家族関係の歪みというのは、多かれ少なかれ、どの家族にもあると思うのです。それぞれが距離を取っていたから、たまたま隠れていただけの話。
その歪みが、いざ皆が集まって何かをしなくちゃいけないとなったときに、一気に表面化するんですね。その最たるものが「介護」です。
ですから、これは家族同士のコミュニケーションの問題であって、介護とは関係がないものなのだ、「介護」という形を伴った家族のなかでのライフイベントが起きたときに、これまで潜んでいた歪みが表面化しているだけなのだと整理できると、だいぶラクになると思うのです。