「この国で各地の地裁に起こされた民事訴訟は年間14万件、起訴された刑事事件は6万件。そのうちニュースとして報道されるのは、ごくごくわずかな一部にすぎません」と語るのは、日本経済新聞電子版「揺れた天秤~法廷から~」の取材班。そこで今回は、この大好評連載をまとめた書籍『まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』より一部を抜粋し、<学びになるリーガル・ノンフィクション>をお届けします。
息子が嫌がらせを受け……
2018年4月、ある日の午後6時ごろ。東京都内の公立中学校の教室で、1組の夫婦が息子をいじめた相手が来るのを待っていた。
やがて中学3年の男子生徒(当時)が母親に付き添われて入って来た。学年主任が両者を引き合わせると、妻が早速切り出した。「うちの息子が不登校になっている。お聞きになっていますよね」
発端は約半年前の席替えだった。「私語がうるさい」と感じた息子から相談を受けた妻が、担任に「席替えをしてほしい」と要望。
実際に席替えがされた後、面白くないと感じた男子生徒ら数人のクラスメートから息子が嫌がらせを受けるようになったという。