50歳を機に、アナウンサーとして28年務めていたTBSを退社し、現在、フリーアナウンサーとして大活躍の堀井美香さん。一人朗読会やエッセイ本『一旦、退社。~50歳からの独立日記』を出版。また、ジェーン・スーさんとの人気Podcast番組「OVER THE SUN」では日本武道館公演を開催するなど、その活動はジャンルレス。そして、初舞台にして初主演となる『フェードラ-炎の中で-』が、6月26日から幕を開けます。同舞台でアテネの王の妻フェードラを演じる堀井さんに、舞台への意気込みから心の持ち方のことまでじっくりとお話をうかがいました。(構成:かわむらあみり)
初めてのお芝居は直感で決めました
初めてお芝居をすることになりました。きっかけは、フリーになって2022年に朗読会を立ち上げた時から構成・演出を担当してくださっている演出家の深作健太さんに、お声がけをいただいたことです。最初は、深作さんに「一度、稽古を見に来てください」と言われて、芝居に関してはまるで無知だし、ワークショップすら行ったことがない。そんな自分がとんでもないと思っていたんです。でも何度かお話があったあと、潔く「受けます」と即答していましたね。
未経験の私が主演ということに、事務所の人たちも心配していました。でも、いつも何かを決める時は直感なんです。この舞台だけでなく、どんなことでも、事前のリサーチなしで、直感でやろうと思ったことに突っ走ります。いざ舞台の稽古に入ると、お芝居はとても難しいということが分かりましたが。(笑)
朗読会などで、公演の2時間ぶんを全部暗記してしゃべり尽くすことはやっていました。しかし、今回は相手がいる舞台。稽古が始まってからは、深作さんのダメ出し…もとい“愛のあるアドバイス”を毎日いただいています。出演者が6人いる中、深作さんが稽古中におっしゃることの80%は私宛てなので、始めのほうは本当にみなさんに申し訳なくて。
最初は、舞台での身の切り返しや空間の使い方についてアドバイスをいただきました。中でも一番の気づきは、相手の言葉を聞いてからしゃべる、ということ。それを発動点にしなさいと言われて。今まで私は、相手がいる舞台に立つことが少なかったので、これが難しい。セリフと動きを覚えるのにいっぱいいっぱいで、相手との間を考えずにセリフを言ってしまっていた。発するより聞くことが大切、と教えられたのは印象的でした。