「表層の症状だけをピンポイントで治すのではなく、心身の症状を見定めて適した漢方を処方し、さらに生活習慣を見直していただくことで心とからだのバランスを整えていきます」(撮影:福森クニヒロ)
京都にある漢方心療内科で、現役医師として働いている藤井英子さん。93歳の今も、心身に不調を抱える患者さんと向き合い続けています。ストレスや怒り、不満、落ち込みなど、心のモヤモヤを解き放つ極意を聞きました。(構成:野田敦子 撮影:福森クニヒロ)

心とからだは深くつながっている

産婦人科医として7年、精神科医として30年以上、さまざまな患者さんを診てきました。当時から漢方を治療に取り入れてはいましたが、50代のころからその奥深さにさらに魅せられるように。長年勤めてきたクリニックを退職したのをきっかけに、小さな漢方心療内科を開院することにしたのです。89歳のときでした。

早いもので、あれから4年。93歳になった今も、週4日の診療を続けられているのはうれしい限りです。ひっそりと始めた完全予約制の医院に、今では飛行機や新幹線を使って、はるばる来院してくださる方もいらっしゃいます。

患者さんは、人間関係や仕事、子育て、介護のストレスなど心の不調に苦しんでいる方もいれば、原因不明の頭痛やめまい、動悸、不眠などの体調不良、漠然とした不安感、抑うつ感、気力減退に悩んでいる方など、さまざまです。

驚かれる方も多いのですが、私は悩みをうかがい、対話などをとおして問題を解決していくカウンセリング療法を主としていません。

「心身一如」という言葉をご存じですか? 東洋医学の基本的な考え方で、心とからだは別々ではなく、深くつながっているという意味です。