起きたことよりも次にどうするか
患者さんに漢方薬を処方するときは、「その気になったら飲んでみて」とお伝えする程度にしています。医師の中には、患者さんが言うとおりにしないと怒る人もいるそうですが、そんなことで怒っていたらあきませんよね(笑)。
思うように飲んでくださらなくても、「今は、そんな気分やないのね」と静かに受けとめて、様子を見るのが一番です。そのうちに患者さんの気が変わり、「飲んでみようかな」となることは多いですから。
無理強いしないのには理由があります。こんなことを言うとそっけなく聞こえるかもしれませんが、患者さんの困りごとは患者さんのもの。医師だからといって、必要以上に立ち入ってはいけないと考えているからです。
そもそも人は、誰であっても自分以外の悩みや課題を解決することはできないもの。家族や友人が悩んでいる姿を見ると、心配のあまりつい口を出したくなりますよね。でも、はたしてそれで事態が好転するでしょうか。
どんなに近しい間柄でも、その人にはその人の人生があります。「〈相手のため〉を口実に、課題や悩みを勝手に取り上げてはいけない」、そう私は考えているのです。