私には、亡き夫との間に子どもが7人、孫とひ孫は合わせて15人います。次男と一緒にクリニックを運営し、次女とは同居していますから、子どもたちには助けてもらったり元気をもらったりの毎日です。
それでも子どもは子ども、私は私。別人格ですから、何かを期待したり、干渉したりはしません。私の性格がさっぱりしているということもあるかもしれませんが、家族の悩みも、患者さんの悩みも、そのまま「自分ごと」にはならないのです。
とはいえ人間は社会的な生き物ですから、誰もが必ず誰かのために心とからだを砕いて生きています。だからこそ、自分ひとりならば味わうことのない困難や苦しみを抱えることになってしまうのも当然です。
それでも人はひとりでは生きられない。これはもう宿命と呼ぶほかありません(笑)。人間関係はなければ寂しく、あれば煩わしいもの。うまくいかなくて当然なのです。
人と人の間に必要なのは、ほどよい心の距離。「心の距離なんて、どうやってとるの?」と思われるかもしれませんが、方法はいたって単純。「その存在を忘れる時間を作る」だけです。
最初のうちは、5分でも10分でも構いません。うまくいかない家族や親戚、ぎくしゃくしている友人、職場の苦手な上司、思い出すと腹が立つあの人この人をいったん忘れてみる。折り合いをつけよう、仲良くしよう、とがんばるのをやめるのも手です。