（『べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～』／(c)NHK）
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現在放送中の大河ドラマ『べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～』（NHK）。日本のメディア産業・ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物〈蔦重〉こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描いたドラマも、まもなく完結へ。そこで12月14日の最終回を前に『べらぼう』の制作統括である藤並英樹さんからお話を伺いました。（取材・文：婦人公論.jp編集部 吉岡宏）

蔦重とあの人がドラマの中心になる予定だった？

実は『べらぼう』は当初、蔦屋重三郎と田沼意次をメインに描いていこうと考えていました。しかし意次は途中で退場してしまいますので、最後まで…と考えるとやはり歌麿との関係性は重要だな、と。

それでも、脚本・森下佳子さんと最初に話した時には、今現在、染谷将太さんが演じられているような歌麿の役割までは想定していませんでした。

ただ、美術史考証ご担当の東京国立博物館・松嶋雅人先生に取材をした際、歌麿が残した作品からは、女性の気持ちがわかっているような様子が見られていて、おそらく内面的に女性的な要素があったんじゃないか、といったお話を伺いまして。

また松嶋先生からは、生まれ年も分からないなど、それこそ写楽以上に謎の多い人物であることも聞き、「蔦重が手掛けた作品の中でも、一番が歌麿のものになればいいよね」「敬愛の念や、愛情のようなものを持たせることができたらいいよね」と森下さんとのやりとりが進み、今のような背景を持つキャラクターが誕生しました。

加えて、演じるのが染谷さんに決まったことで、森下さんの中の歌麿に対するインスピレーションのようなものが、より膨らんでいったんじゃないかなと。

結果的に『べらぼう』は作家・作品とストーリーが結びつく構造をとることになりました。戦国ものなら、ドラマのキーとなる“いくさ”が必ずありますよね？　同じように、今回は“作品”がキーになったわけです。

『べらぼう』では、脚本を書き進めていただくにあたって「年表」を作っているんですが、その年表に「この年、歌丸の美人絵が出ました」「京伝の黄表紙が刊行されました」などと、あてはめながら構成を考えていったので、ますます絵師や戯作者の存在が重要になっていきました。