(撮影:本社・武田裕介)
大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では天才絵師・歌麿を演じるなど、独特の存在感と高い演技力を持つ俳優・染谷将太さん。その染谷さんが、このたびNHK・特集オーディオドラマの脚本と演出に挑戦。作品名は『だまっていない』。内容は……タイムスリップSF×モンスターパニック!? 12月29日放送となる”意欲的すぎる”作品の裏側とともに、ご本人曰く「とにかく忙しかった」と語る2025年を振り返っていただきました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏、撮影:本社・武田裕介)

音だけで物語を作りたいなって

映画音楽や劇伴などに携わられている渡邊琢磨さんと、何年か前から「音だけで物語を作りたいよね」という話をしていて。大河ドラマ『べらぼう』制作中、NHKのオーディオドラマならそれが実現できるかもしれないと思い、企画を出しました。

自分はもともと映像においても、音をすごく大事にしていて。ショートフィルムなどを監督した時も、音の仕上げが好きだったんです。役者としても、自分の声のトーンなどを気にするタイプなので、音だけで聞き手に想像してもらう表現に興味を持っていました。

音だけだと、想像の可能性がグッと広がります。画(え)に縛られず、聴き手に想像してもらえることが面白い。自分の頭の中で映像のカット割りを作り、それを音に落とし込み、聴き手にまた映像を想像してもらう…。そんな不思議な表現ができるんですよね。

SFをテーマにしたのは、自分のテーマを具現化するのに”最適”と思ったから。地球人類が外から攻撃を受ける。その構図が物語を紡ぐのに適しているんじゃないかって。また、宇宙人についても、人それぞれの宇宙人像を想像してもらえるんじゃないか、と。

もともとSFが好きということもありますが、音で想像するなら、日常的なものより突拍子もないものの方が良い。実際「いかようにも想像できる世界」は楽しいですし。

最初にシナリオをちゃんと書いたのは、高校生の頃に撮った自主映画でした。俳優の仲野太賀と一緒に自主映画サークルを立ち上げて、そこで初めて描き上げました。その後、高校を出た後も自主映画を何本か制作しましたし、協賛を得て作品を作ったことも。

しかし、オーディオドラマは映画とは全く勝手が違い、すべて台本のセリフとト書きの音で形成されるため、映像で説明できるものを音だけで説明しなければならず…。やっぱり難しかったですね。