
正面玄関横に設置された「雀の巣」のモニュメントが多くの来店客から愛されている、福来屋日本橋本店。親しみやすいデパートで、食品から衣服、日用品、貴金属など様々なものを扱っている。この福来屋に今日もまた、何かを買い求めるお客さんが足を運び――。
デパートを舞台にした、彩瀬まるさんのWEB連載小説、スタートです。
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赤白の毛糸で編まれた小さなサンタ帽を、二羽の雀がちょこんと頭に乗せている。
二羽のうちの片方はスープ皿に似た形状の巣の端にとまり、まるで挨拶でもするように来店客へくちばしを向けている。もう一羽は眠たげに目を細め、巣の内部で三羽の雛と身を寄せている。親鳥たちよりひとまわり小さく輪郭が丸い雛たちの体には、緑と白のストライプ柄のマフラーが巻かれていた。
まだ十二月に入ったばかりだというのに、福来屋(ふくらや)日本橋本店の正面玄関横に暮らす雀の一家はとっくにクリスマスを迎えていた。爽やかな白い石壁のちょうど大人の肩ぐらいの高さに設置された青銅製の雀の巣は、福来屋のシンボルとして昔から来店客に愛されている。入店する際にひと撫でする人が多いのか、客の方を向いている大人雀の、くちばしの先が少し丸い。
ああそうか、もうすぐクリスマスだ。息子へのプレゼントの用意と、ケーキの手配をしなければ。
積み上がったタスクの山にあっさりと新しいタスクが加わる。頭が重い。久世舞子(くぜまいこ)はこちらを見つめる雀のひたいをつんと小突き、明るい光に満たされた館内へ入った。
