(写真提供:Photo AC)
2025年9月にリリースされた米津玄師さんの「IRIS OUT」が、米ビルボードのグローバルチャート「Global 200」で、日本語楽曲として史上最高位となる5位を記録しました。日本のアーティストが続々と海外に進出していますが、なぜ日本の音楽は世界に届くようになったのでしょうか。そこで今回は、音楽ジャーナリスト・柴那典さんの著書『ヒットの復権』より一部を抜粋してお届けします。

『鬼滅の刃』と「紅蓮華」

2019年を象徴するヒットソングの一つにはLiSA「紅蓮華」がある。

アニメ『鬼滅の刃』竈門炭治郎立志編オープニングテーマとして書き下ろされたこの曲。そのヒットの経緯は、従来のアニメソングの常識を覆すものだった。2019年4月にアニメの放送開始と共に配信がスタートし、当初からアニメファン層を中心に順当なヒットを記録していた。ただ、その勢いが加速したのはその後のことだ。

転換点はアニメの放送終了後に訪れた。制作スタジオufotableによる作画と演出のクオリティが話題になり「後追い視聴」が急増した。その背景には、アニメがNetflixなどの配信プラットフォームで観られる環境が整ったこともあった。本来であれば、アニメの話題性は地上波の放送終了と共に沈静化していくのが通例だ。しかし『鬼滅の刃』のブームは、そこからさらに拡大していった。

原作コミックの売上の推移がこの現象を如実に物語る。累計発行部数は、アニメ放送開始時点の350万部から、9月の放送終了時点で1200万部、そして12月に2500万部を突破。放送終了後の3ヶ月で倍増した。

あわせて「紅蓮華」の評判も広まっていった。決定打になったのは2019年の紅白歌合戦への初出場だろう。『鬼滅の刃』の名場面の映像をバックに歌った歌唱をきっかけに、アニメを観ていない層にも楽曲が届いた。ストリーミングの再生回数も飛躍的に伸び、リリースから約1年1ヶ月後の2020年5月に1億回再生を突破している。

結果的に、「紅蓮華」は、アニメ主題歌が年間チャート上位にずらりと並ぶようになった2020年代の趨勢の先駆けとなった。