音楽をどう見せるか
そこで明かされたのは徹底した市場分析に基づく戦略だった。
構想はチャンネル開設の半年前から練られていた。当時、海外ではすでにストリーミングが音楽聴取の主流になりつつあったが、日本はまだ過渡期。一方、スマートフォンでYouTubeを視聴する習慣は広く定着していた。そこで音楽をどう見せるかが企画の出発点だった。
「ストリーミングと直結できるプラットフォームやメディアを作ろうとまずは考えていました。地上波の音楽番組ともミュージックビデオとも違うコンテンツをYouTubeの中で作りたい――そういう思いが発想の根幹にありました」(スタッフ)
そこで運営チームが着目したのが「ショルダーコンテンツ」の存在だ。MVだけでなく、ティーザー動画やリリックビデオ、ライブバージョンなど楽曲を様々な見せ方で切り取った動画が、ストリーミングへの流入に影響を与えていた。そこから、アーティストの生歌と生演奏を収録し、統一感のあるデザインで見せる「THE FIRST TAKE」の発想が育っていった。
※本稿は、『ヒットの復権』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『ヒットの復権』(著:柴那典/中央公論新社)
なぜ、いま日本の音楽が世界に届くようになったのか?
その背景には、2020年代になって生まれた新たな「ヒットの力学」がありました。
本書はその構造的な変化を、2016年からの10年間を辿りながら解き明かします。




