14歳で出会った監督
「監督がずっと持っていたものだから。これね。愛美さんにお見せしようと思って出しておいたの」
監督の家にうかがった。私をスカウトしてくれた事務所の人と共に。奥様と奥様のお兄様が出迎えてくれた。
テーブルの上には、14歳の私の写真が置いてあった。びっくりした。新人すぎて、プロに撮ってもらった宣材写真でもなく、母が自宅で撮った、ただの写真。きっとオーディション用に当時のマネージャーさんが渡していたのだろう。監督がその写真をずっと持っていたなんて、全く知らなかった。
14歳でスカウトしてもらい、チャンスがあるならばと事務所に所属し、一番最初の大きな仕事は映画だった。お芝居をしたこともない本当の新人を、「目がいい」という理由で選んでくれたのは私の映画デビュー作となった時代劇「蝉しぐれ」の黒土三男監督だった。
当時、地元の静岡に住んでいた中学生の私は、監督と会うため東京に呼ばれた。事務所の人に連れられ、高そうなホテルのラウンジで監督とプロデューサーと面談をした。
修学旅行ではどこのお寺に行ったのかと聞かれたけれど、しっかり覚えていなくて、曖昧な回答をしてしまったということだけ覚えている。
終わって監督とプロデューサーと別れたあと、すぐに連絡がきて、採用となった報告をもらった。
私の人生の中で一番のターニングポイント。
これがどれだけすごいことなのか、今でこそわかるけれど、当時の私には全く実感が湧いていなかった。
日本の美しい四季を撮るということで、撮影期間は長期にわたった。
クランクインした秋には1日だけ、冬には数日、メインとなる夏に一番長く撮影をした。
作品の規模も大きく、監督のこだわりも多く、とにかく贅沢な映画だった。まだフィルムの時代だった。