「結局きれいかどうかって、いかに若く見えるかってことになってしまうんでしょうか」

 ITOさんはじわりと目を大きくして、メイクブラシの動きを止めた。綾香は慌てて言葉を足した。

「すみません、変なこと聞いて。ええと今日、偶然職場で、十九年前の自分の写真を見て……餅つき大会ではっちゃけてる写真だったんですけど、やっぱり、若さって眩しいなーって思って、それも、今日ここにきたきっかけだったんです」

「若さ……若さですか。どうでしょう。うちのお店には二十代の若いスタッフもいるし、お客様も十代から九十代まで、さまざまな年代の方がいらっしゃいますけれど……」

 二十代を若いと評するということは、ITOさんはそれよりも年上なのか。緻密にメイクされた目元しか見えないので、あまり年齢がわからない。綾香は首を傾げるITOさんの回答を黙って待った。無意識に抱えていた疑問を口に出してやっと、自分が老化を馬鹿にするトーンのネット広告に傷ついていたのだとわかった。

「うーん……うちのスタッフを見ていて感じることですけど……ほら、若い人って、悩みごとが多いじゃないですか。仕事がどうとか、暮らしがどうとか、恋愛がどうとか」

「はい」

「仕方がないことなんですけど、若い人の中には、そういう悩みから来る自信のなさや、不安が表情に出ている人もいます。だから、若さがすなわちきれいかっていうと、それだけではなくて……むしろ私ぐらいか、それより上のお姉様たちの方が、人生に対する度胸がついて、心がハッピーでキラキラしている感じが出てきて素敵だな、と思うことも多いです」