取材中も、子安さんと仲睦まじい松井さん(撮影:宮崎貢司)
4年前、76歳のときに13歳年上の男性と再婚した映画監督の松井久子さん。結婚後、ふたりで暮らす終の棲家探しを一から始めたと言います。どんな苦労があったのでしょうか。(構成:菊池亜希子 撮影:宮崎貢司)

前編よりつづく

決め手の一つは人との出会い

私たちが終の棲家に選んだマンションは、リビングダイニング、扉一枚挟んで私の書斎、先生の書斎、寝るときは一緒ですから寝室は一つ、というふたり暮らしにちょうどいい3LDKです。段差のないバリアフリー設計なのも助かっています。

内装や間取りに特別なこだわりがあったわけではありません。じつは、ここを選んだ決め手の一つは、不動産会社の営業の方との出会いでした。彼女は自分と夫の両親、そして夫の5人を介護して見送り、その後、今の仕事に就いたという80代半ばの方だったのです。

彼女の行き届いた説明は素晴らしく、小さな気がかりから購入に対する不安まで、すべて相談に乗ってくださいました。彼女とのご縁があったからこそ、年齢的にも気力的にも大変な終の棲家探しを最後までできたのだと思います。今ではお友達なんですよ。(笑)

いよいよ新居が決まり、同時に進めていた登戸の家の売却先も決まりました。私は元来、物に執着がないうえ、今はとにかく身軽。先生も驚くほど物に執着がなく、最小限しか持たない人。ただ、1万冊を超える本以外は(笑)。

その蔵書も、結婚して私を家に迎える際に、かなりの量を古書店に引き取ってもらっていました。また、登戸の家は家具のほとんどが作りつけだったので、大きな家具の移動もなし。比較的スムーズな引っ越しだったと思います。

とはいえ、ふたり分の荷物は全部で段ボール150箱ほどになったでしょうか。荷造りは「おまかせパック」でプロの手に委ね、荷解きはふたりでやりました。

その際に出た大量のゴミや段ボール箱は、先生があっという間に片づけてくれた。24年12月26日に転居したときには、箱が積みあがっていたわが家も、6日後の元日にはスッキリ片づけ終わった状態でお客様を招いて、お節料理も拵(こしら)えて、新しい年を迎えました。