演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が訊く。第56回は歌舞伎役者・俳優の坂東彌十郎さん。小学校3年の時に初めて出会ってから49年間勘九郎さんの子分だと笑って話す彌十郎さん。初舞台は17歳と遅かった理由は――。(撮影:岡本隆史)
マウントを取られた
180センチを優に超す巨漢でありながら、威圧感が抑えられているのは、愛嬌のある細い眼と、そのフレンドリーな性格ゆえだろうか。
坂東彌十郎さんは、2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では主人公北条義時の父・時政を演じ、一気に全国的な知名度を得て、歌舞伎でも重要な役を演じることが多くなった。
でもそれまでにはかなり長い雌伏の時があったことを、歌舞伎の観客たちは知っている。
――はい、『鎌倉殿の13人』は間違いなく大きな第3の転機ですね(笑)。それはまたあとで。
僕の父は坂東好太郎といって、松竹の京都下加茂撮影所の三羽烏と言われた映画スターでした。ほかのお二人は長谷川一夫さんと高田浩吉さんです。
そもそも父は13代目(守田)勘弥の息子だし、踊りの神様と言われた7代目(坂東)三津五郎は父にとって伯父にあたります。
でも20歳過ぎくらいの時に映画に誘われていきなり主役を演じたそうです。それから30年ほどして歌舞伎に復帰しました。