ChatGPTがもたらした「見えない価値」
世界全体ではChatGPTはどのように使われているのだろうか。デューク大学とハーバード大学の経済学者とChatGPTを提供しているOpenAI社の研究者らは、ChatGPTの内部データ(約110万件の会話)を用いて大規模な研究を行った(Chatterji, et al., 2025)。2025年7月時点で、ChatGPTの週間ユーザー数は7億人だった。
これは世界の成人の約10人に1人が毎週使っている計算である。週に約180億件ものAIによるメッセージが送られており、その普及速度は過去のどんな技術よりも速い。当初は男性の利用者が多かったが、2025年にはほぼ男女半々にまで近づいている。
興味深いのは、何に使われているかである。利用の約80%は三つに集中する。第一は「実践的なアドバイス」(約29%)で、勉強の手伝い、料理のレシピ、ハウツーなどだ。第二は「情報を調べる」(約24%)というものでウェブ検索の代わりに使う人が多い。第三は「文章を書く・直す」(約24%)、メールの作成、文書の翻訳や要約などである。特に仕事で使う場合、最も多いのが「文章を書く・直す」(約40%)であり、しかもその3分の2はゼロから文章を作るのではなく、自分が書いた文章をAIに直してもらったり、翻訳・要約をしてもらったりする使い方だ。つまり、仕事でのAIの一番の役割は「新しいものを作る」ことよりも「すでにあるものを良くする」ことなのである。
もう一つ重要な発見がある。2024年6月には仕事関連の利用がAIによるメッセージ全体の約47%を占めていたが、2025年6月には約27%に下がった。これは仕事での利用が減ったわけではない。仕事の利用も約3.4倍に増えたのだが、それ以上に「仕事以外」の利用が約8.0倍に急増したのである。趣味、勉強、日常生活のアドバイスなど、仕事以外の場面でのAI活用が爆発的に広がっている。これはGDPの数字には表れないが、人々の生活を確実に便利にしている部分であり、研究者たちはアメリカだけで年間970億ドル(約14兆円)以上の「見えない価値」が生まれていると推計している。