もはや蛇口がどこにあるかわからなくなった流し台(写真:笹井恵里子)
食べかけの「インスタント焼きそば」、夫の位牌の横に貼られた「張り紙」……。一清掃作業員として、認知症になった高齢者の自宅に向かうことになった笹井恵里子さん。そこは山積みのゴミで溢れた、まごうことなき「ゴミ屋敷」だった。ジャーナリストの笹井さんが実際に作業をするなかで見た、ゴミ屋敷のリアルとは

コロナでゴミ屋敷が増加?

今、ゴミ部屋と自分は関係がないと思っていても、どこでつながりができるかわからない。作業員として仕事をしていると、つくづくそう思う。

特に新型コロナウイルスの発生からステイホームが推奨され、在宅時間が延びたことで「ゴミ屋敷が増えていると実感する」と、生前・遺品整理会社「あんしんネット」の石見良教さんは言う。

今年のゴールデンウィーク中、「あんしんネット」に「認知症を発症した高齢者の家を片付けてほしい」という依頼が入った。約20年ほど前に夫を亡くした一人暮らしの80代女性が住む戸建てで、依頼主は女性の姪である。

女性は体の病気の治療のため、病院に入院となったが、本人との意思疎通がとれない。困った病院が、唯一の身内である姪に連絡をとった。姪は、 叔母である女性の家をしばしば訪れていたようだったが、決して家の中には入れてもらえないでいた。

しかし今回、女性の入院を機に鍵を受け取り、玄関に一歩足を踏み入れると、なんとゴミの山だったのだ。