「死」を感じた時(二子橋から夕焼けを眺める)
編集者で作家、そしてサックスプレイヤー、複数の顔を持つ末井昭さんが、72歳の今、コロナ禍中で「死」について考える連載「100歳まで生きてどうするんですか?」。母、義母、父の死にざまを追った「母親は30歳、父親は71歳でろくでもない死に方をした」が話題になりました。第17回は、「安楽死について」です。

第16回●「〈もうダメだ、別れるしかない〉と思った男女と、イエスの方舟と」

安楽死を合法化している国

前にも書きましたが、ぼくはガンになったことがあるので、胃と大腸の内視鏡検査を定期的に受けています。その時、軽い全身麻酔をしてもらうのですが、それがすごく気持ちいいのです。医師から「お薬入りますよ〜」と言われて、点滴から麻酔薬が入ってくると、わずか4〜5秒で意識がスーッとなくなります。その瞬間、苦しみから解き放たれたような、何とも言えない穏やかな気持ちになります。それを「一瞬の極楽浄土」と呼んで、毎回楽しみにしているのですが、それが安楽死のイメージと重なるのです。

ぼく自身、逃れられない精神的肉体的苦痛があるわけでもないのですが、全身麻酔で意識がなくなっていく瞬間、「このまま死んでしまってもいいかな」とチラッと思うことがあります。しかし、麻酔で危篤状態になる確率は10万分の1以下だということはわかっているので、本当に死ぬとは思っていません。でも、ゼロではありません。運悪く(あるいは運良く)全身麻酔中に死んでしまえば、本当の安楽死となります。死ぬという恐怖がないまま死ねるのですから。

 

現在、安楽死を合法化している国は、スイス、アメリカ(オレゴン州・ワシントン州・モンタナ州・バーモント州・ニューメキシコ州・カリフォルニア州・ニュージャージー州・ワシントンD.C.)、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、カナダ、オーストラリア(ビクトリア州)、ドイツ、スペイン、ニュージーランドなどです。スイスとアメリカ・オレゴン州以外は2000年代になってから合法化されていて、これからまだまだ増えていくのではないかと思われます。

一概に安楽死合法化といっても、オランダやベルギーのように、医師が患者に直接致死薬を投与出来る「積極的安楽死」が認められている国と、スイスやアメリカのように「医師介助自殺」を認める国とに分けられます。「医師介助自殺」とは、医師は致死薬を処方するだけで、それを患者が自ら飲むか、致死薬の入った点滴のストッパーを自分で開けるかして命を絶つことを言います。

患者と書きましたが、治る見込みのない何らかの病気であることが安楽死を受ける条件で、単に世を儚んで安楽死したいと思ってもやって貰えません。大まかに言うと、「治る見込みがない病気であること」「堪え難い苦痛や障害があること」「健全な判断能力があること」が最低条件となります。