イラスト:飛田冬子
人生後半に差しかかり、これからは本当にわかり合える友人と穏やかな関係を築きたい。でも、心を通わせるのが難しい場面もあって──。読者アンケートで寄せられたお悩みに、人生相談のプロがアドバイスします。今回は新型コロナウィルスの蔓延で明らかになった価値観の違いについて、精神科医の水島広子さんが答えます(構成=山田真理)

【相談】
コロナ禍で感じた価値観の違いや温度差

一緒に美味しいものを食べ歩いたり、国内旅行に出かけたりするのがA子と私の趣味でした。

コロナ禍でしばらく自粛していましたが、感染者数が落ち着いていた昨年の秋に「近場の温泉に行こう」とA子を誘ったところ、「娘や夫に止められたし、感染リスクを冒してまでは行けない」と断られたのです。

以来、連絡しにくくなってしまい、コロナによって友情を引き裂かれたような気分。このやり場のない気持ちとどう向き合えばいいのでしょうか

(58歳・会社員)

 

【回答】
視野が狭まると「敵」に見える。
楽しかった頃を思い出して

(回答者:水島さん)

新型コロナウイルスに関しては、感染経路や予防法、治療法など不明な点がいまだに多く、そのため人によって考え方、対応の仕方がまちまちになりがちです。家庭内でも意思の統一が難しいこともあるのに、ましてやコロナに対する考え方に友人と温度差があるのは仕方がないことだといえるでしょう。

人は強い衝撃を受けたとき、自分と同じ反応をしない人を「敵」とみなす傾向があります。ただでさえ不安なのに、違う意見を言われて気持ちを揺さぶられるのが不快であるという気持ちが、ヒステリックな反応に直結するのです。

コロナが怖いというA子さん(とその家族)にとっては、温泉に誘ってくるあなたが「敵」かもしれない。逆にステイホームばかりでは気持ちがふさぐから温泉でリフレッシュしたいあなたには、感染を怖がり過ぎるA子さん一家が「敵」というわけです。