ペギー葉山(ぺぎー・はやま)さん(写真提供:読売新聞社)
作家でありながら「対談の名手」とも言われる五木寛之さんは、数十年の間に才能豊かな女性たちに巡り合ってきました。その一期一会の中から、彼女たちの仕事や業績ではない、語られなかった一面を綴ります。第5回は「ドレミの歌」や「南国土佐を後にして」で幅広い世代に親しまれた歌手・ペギー葉山さんです。(写真提供:読売新聞社)

直木賞受賞式会場で咲く白い大輪の花

一枚の写真がある。

胸に造花をつけた私がいる。その私を囲むようにして数人の男性が談笑している。昭和の有名作家たち、松本清張、有馬、そしてシバレンこと柴田錬三郎氏の面々である。それぞれが来賓の造花を胸につけ、どこかはしゃいだような表情だ。

場所は新橋の第一ホテルである。当時は芥川賞、直木賞の受賞パーティーは、毎回この場所で行われることになっていた。

1967年の新春、私は『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞を受けた。松本清張さん、柴田錬三郎さんは、その時の選考委員だった。有馬さんは私が小説現代新人賞を受けたときの選考委員のお一人でもある。

文壇の先輩がたに囲まれて、三十代の私はすこぶる緊張した表情だ。当時は金沢に住んでおり、受賞式のために上京したのでなおさらである。

会場につめかけた人々の視線が集中しているのは当然だろう。数人のカメラマンがさかんにシャッターを切っている。

しかし、人々の注目を集めたのは、いわゆる高名な作家が談笑しているからだけではなかった。そこに華やかな人気歌手の姿が加わっていたからである。

ふだんどちらかといえば、むっつりした表情の柴田さんや松本さんが、笑顔で談笑している光景は、カメラマンたちにとってもめずらしいシーンだったにちがいない。