血管の老化は、脳疾患や心疾患など命にかかわる深刻な病気の要因に。けれど、血管は何歳からでも鍛えられると専門医の池谷敏郎さんは言います(構成=島田ゆかり イラスト=谷本ヨーコ)

4人に1人が血液・血管の病で死亡、老化の原因にも。「血管力」を低下させる4つの危険因子〈前編〉からつづく

血流アップと血流コントロール

血管の内壁(流れる血液に触れる面)は、「血管内皮細胞」という薄い細胞の層で覆われています。動脈にある血管内皮細胞から分泌される一酸化窒素という物質がNOです。

NOにはいくつもの働きがあります。まず、動脈を拡張させて血液の流れを良くし、血圧を下げる効果。次に、血管内の炎症を抑えて傷を修復、血栓ができるのを防ぐとともに、出血のリスクを低下することにも役立ちます。

最近の研究では、血管内皮細胞の衰えが動脈硬化の始まりと考えられており、NOをたっぷり分泌することで、これらの状態が改善されていくのです。

それでは、NO分泌を促すためのエクササイズをご紹介しましょう。血液が流れることで血管内皮細胞が刺激されてNOが分泌されるため、全身に血流が巡る有酸素運動や、血管を収縮させてから拡張させることで血流をコントロールする運動が効果的です。

まず、有酸素運動の「NOウォーキング」と「ゾンビ体操」。

筋肉を動かす際に「ブラジキニン」という物質が放出され、血管内皮細胞を活性化させてNOの分泌を促進します。

ウォーキングの時間がとれない人は、トイレに行くついでやテレビを観ながらなど、日常生活の中にゾンビ体操を取り入れてみてください。

次に、血管を収縮させてから拡張させる動きを取り入れた「ボート漕ぎ運動」と「1分間正座」。

拡張した血管を血液が一気に流れることで、血管内皮細胞がマッサージされ、その結果血流が良くなります。

さらに、体が温まる食材を積極的に摂取することや、ゆっくり入浴することも、血管を広げて血流を促進し、NOが全身の血管に巡るのでおすすめです。

NOをたっぷり出すことは難しいことではありません。簡単な生活習慣、ちょっとしたコツで血管力をアップすることができますので、あなたもぜひチャレンジしてみてください。