2021年は、映画『朝が来る』で助演女優賞を受賞し、樹木希林さんについて綴った初の著書『ひとりじめ』を上梓するなど、刺激的な年だったと振り返る浅田美代子さん。今の自分があるのはすべて縁の力のおかげと語る理由は。(構成=村瀬素子 撮影=大河内禎)
あの場は一種のオーディションだった
今年の抱負ですか? うーん、難しい(笑)。これを実現したいとか、最高の1年にしようとか、そういう気負いは私にはないですね。毎年そうです。元気で仕事をして、大切な人たちや愛犬と楽しく笑って過ごせたらいい。そういう日常こそが幸せだと思うのです。
そもそも私は、野心をもって自分からチャンスを掴み取るタイプではありません。さしたる才能も明確なビジョンもない私が、生き馬の目を抜くような芸能界で長く生きてこられたのは、人の縁に恵まれてきたから。つくづくそう思います。
16歳の時にオーディションで選ばれ出演したのが、国民的人気ドラマ『時間ですよ』だったこと。そこで、人生の師であり、生涯の友だちとなる樹木希林さんに出会い、演出家・久世光彦さんに「お芝居は技術より気持ちでやるんだよ」と役者としての礎を教わり、厳しく鍛えられました。
そして吉田拓郎さんと離婚後に芸能界に復帰してからは、私の〈天然〉と言われる一面を、明石家さんまさんが見出してくれて、バラエティという新たな道へ。今の私があるのはすべて縁の力に導かれてきたからなのです。
2021年には、映画『朝が来る』で日本映画批評家大賞の助演女優賞をいただきました。役者として賞を手にするのは初めてだったから、すごく嬉しくて。実はこの映画の監督・河瀬直美さんとの縁も、希林さんがつなげてくれたのです。
「おもしろい人がいるんだけど、会ってみない?」と希林さんに誘われてランチをご一緒したのが最初。他愛ないおしゃべりをしただけですが、あとから思うと、あの場は一種のオーディションだったのかもしれません。後日、河瀬監督から映画『あん』への出演オファーがありました。15年のことです。